アカウントエグゼクティブと営業の決定的な違いとは?
ビジネスの現場で頻繁に耳にする「アカウントエグゼクティブ」と「営業」という言葉ですが、この二つの職種は一見すると似ているようで、実はその役割や果たすべきミッションには大きな違いが存在します。
アカウントエグゼクティブは「お客様との関係をじっくり育てる農耕型」、一方で一般的な営業は「新しい契約を次々と刈り取る狩猟型」と例えることができるでしょう。
具体的に説明しますと、一般的な営業職は、まだお取引のない新しいお客様を見つけ出し、自社のサービスや商品の魅力を伝えて契約を獲得することを主な目的としています。
それに対してアカウントエグゼクティブは、既存顧客との関係性をより一層深め、単なる取引相手ではなく長期的なパートナーとしてお客様の事業成長そのものを支えていくという、役割を担っているのです。
この根本的な違いを正しく理解することは、皆様の会社のビジネスモデルに本当に合った、最も成果の出る営業組織を構築していく上で、避けては通れない非常に重要なポイントとなります。
ここで大切なのは、どちらの職種が優れている、あるいは劣っているという単純な話ではないということです。
それぞれの役割が、会社の事業が今どの段階あるのか、そしてその中でどのように貢献できるのかを正確に把握し、戦略的に人材を配置していくことこそが、事業を成功へと導くための鍵となるのです。
1-1. 深耕と関係構築を担うアカウントエグゼクティブの役割
アカウントエグゼクティブ(AE)に与えられた最も重要なミッションは、既存のお客様との関係を深く、そして丁寧に耕し、長期にわたる揺るぎない信頼関係を築き上げることです。
その役割は、単に商品を売り込むことではありません。
お客様のビジネスそのものを深く深く理解し、現在抱えている課題はもちろん、将来描いているビジョンまでも共有できる、真のパートナーとなることが強く求められます。
具体的な活動としては、お客様が自社の製品やサービスを最大限に活用してビジネス上の成功を収められるよう、受け身ではなく能動的にサポートを提供し続けます。
その継続的なコミュニケーションの過程で、お客様自身も気づいていなかったような新たなニーズを掘り起こし、より上位のサービスや関連する別のサービスを提案していくのです。
これにより、お客様一人ひとりから得られる生涯にわたる価値、すなわちLTV(顧客生涯価値)の最大化を目指します。
「お客様の成功こそが、自社の成功に直結する」という考え方を基本理念とし、強固なビジネスパートナーシップを育んでいく、まさに「関係を育てる」プロフェッショナルであると言えるでしょう。
1-2. 新規開拓が主戦場となる一般的な営業職の役割
その一方で、私たちが一般的に「営業」と聞いてイメージする職種の主な役割は、まだ取引関係のない全く新しいお客様を見つけ出し、自社の製品やサービスの持つ魅力を情熱的に伝えて、最初の契約を獲得することにあります。
彼らは、いわば会社の売上の源泉を切り開いていく「新規開拓」のスペシャリストなのです。
その活動範囲は非常に広く、市場の動向を調査することから始まり、アプローチすべき見込み客のリストを作成し、電話やメールを駆使して商談のアポイントを獲得します。
そして、実際の商談の場では熱意のこもったプレゼンテーションを行い、最終的に契約締結(クロージング)までの一連のプロセスすべてを担当します。
彼らのパフォーマンスは「どれだけ多くの新しいお客様を会社にもたらしたか」という、新規契約数や新規売上高といった非常に分かりやすい指標で測られることがほとんどです。
もしアカウントエグゼクティブが既存顧客という名の畑を丁寧に耕す農家であるとすれば、営業職は新たな獲物を求めて広大な野山を駆け巡るハンターのような存在と言えるかもしれません。
会社の事業をこれからさらに拡大していく上で、この新規開拓の力は、組織を前進させるための不可欠なエンジンとなるのです。
1-3. 目的・スキル・KPIで比較する両者の違い一覧
アカウントエグゼクティブと営業、この二つの職種の違いを「目的」「求められるスキル」「評価指標」という3つの具体的な観点から整理してみると、それぞれの役割の違いがより一層明確になります。
まず一つ目の「目的」についてです。
一般的な営業が「新規契約の獲得」を最終的なゴールとするのに対して、アカウントエグゼクティブは「既存顧客のLTV(顧客生涯価値)最大化と契約維持」を最大の目的として活動します。
次に二つ目の「スキル」の面を見てみましょう。
営業には、ターゲットとする顧客に臆することなく切り込んでいく行動力や、有利な条件を引き出す交渉力、そして商談を確実に契約へと結びつけるクロージング力が特に強く求められます。
一方、アカウントエグゼクティブには、顧客が抱える課題を深く理解し、最適な解決策を提示するコンサルティング能力や、長期的な信頼関係を築き上げるためのコミュニケーション能力が不可欠です。
最後に三つ目の「KPI」、つまり成果を測るための評価指標です。
営業は「新規契約数」や「新規売上高」といった指標で評価されるのが一般的です。一方でアカウントエグゼクティブの成果は「契約更新率」や「アップセル・クロスセルによる売上額」、さらには「顧客満足度」といった、顧客との関係性の深さを示す指標で測られます。
このように、両者は目指すゴールも、用いる能力も、そして評価される基準も全く異なっているのです。
なぜ今アカウントエグゼクティブが求められるのか?
近年、多くの企業において、アカウントエグゼクティブという役割の重要性が急速に高まっています。
その大きな背景には、顧客との長期的な関係性の中から継続的に価値を生み出していくビジネスモデルが主流になってきたという、市場の根本的な変化があります。
特に、現代の顧客が抱える課題はますます複雑化しており、たった一つの製品やサービスだけでは根本的な解決が難しいケースが格段に増えてきました。
また、SaaSに代表されるような、月額課金制のサブスクリプション型サービスが広く普及したことも大きな要因です。
このモデルでは、いかにお客様にサービスを長く使い続けてもらうか、つまり「LTV(顧客生涯価値)」を最大化できるかどうかが、事業成長の生命線となるのです。
こうした厳しい市場環境の変化に対応し、持続的な成長を遂げていくために、お客様一人ひとりに深く寄り添い、その成功を全力で支援するアカウントエグゼクティブという存在が、今や不可欠となっているのです。
2-1. 複雑化する顧客課題に対応するソリューション営業の重要性
現代のビジネス環境において、お客様が抱える課題は、ますます複雑で多岐にわたるようになっています。
例えば、お客様から「業務をもっと効率化したい」という一見シンプルな要望が寄せられたとしても、その裏側には、部署間の連携不足や、古くなった社内システムの制約、さらには従業員のスキルセットの偏りなど、様々な根深い問題が複雑に絡み合っていることが少なくありません。
このような状況で、ただ自社製品の機能や価格の優位性を説明するだけの、いわゆる「モノ売り」の営業スタイルでは、課題の核心に触れることはできないでしょう。
そこで重要性が増しているのが、お客様のビジネス全体を広い視野で俯瞰し、課題の本質を突き止め、最適な解決策として提案する「ソリューション営業」という考え方です。
この高度なアプローチを実践する上で、お客様の業界知識に精通し、何でも相談してもらえるような関係性を築けるアカウントエグゼクティブの役割は、極めて重要になります。
表面的なニーズに応えるだけでなく、潜在的な課題までも見つけ出し、共に解決していく信頼のパートナーとして認められることこそが営業担当者に求められる理想の姿なのです。
2-2. LTV最大化を目指すサブスクリプションモデルとの相性
SaaSビジネスに代表されるサブスクリプションモデルの普及は、アカウントエグゼクティブという職種の重要性を飛躍的に高める大きなきっかけとなりました。
このビジネスモデルでは、一度契約を獲得して終わり、ではありません。
お客様がサービスを継続的に利用し、その価値を日々実感し続けてくれることこそが、会社の収益を支える生命線となります。
もし、お客様がサービスをうまく使いこなせず、期待していた成果を得られなければ、すぐに解約(チャーン)されてしまうというリスクが常に付きまといます。
だからこそ、契約後のお客様に積極的に関わりを持ち、サービスの活用を支援し、小さな成功体験を一つひとつ積み重ねてもらうことが、他の何よりも大切になるのです。
アカウントエグゼクティブは、まさにこの「契約後の顧客体験」を向上させるというミッションを担う、中心的な存在です。
定期的なフォローアップを通じてお客様の満足度を高め、解約という最悪の事態を防ぎます。
さらには、上位のプランへのアップグレードや、関連サービスの追加契約を促すことで、LTVを最大化させるという、事業成長に直結する非常に重要な役割を担っているのです。
サブスクリプションビジネスの成功は、アカウントエグゼクティブの活躍にかかっていると言っても、決して過言ではないでしょう。
2-3. あなたの会社はどっち?事業モデル別に見る最適な営業体制
では、営業責任者であるあなたの会社には、従来の「刈り取り型」の営業職と、新しい「農耕型」のアカウントエグゼクティブ、どちらの体制がより適しているのでしょうか。
この問いに対する答えは、会社が扱っている商材や、収益を生み出すビジネスモデルによって大きく異なります。
例えば、住宅や高額な機械設備のように、お客様が一度購入したら長期間にわたって使用する「売り切り型」の商材がビジネスの中心であれば、従来の営業組織がその中心的な役割を担うことになるでしょう。
一方で、SaaSやコンサルティングサービス、広告代理店のように、お客様と継続的な関係を築き、長期にわたって収益を上げていくビジネスモデルの場合は、アカウントエグゼクティブの役割が極めて重要になります。
もちろん、多くの企業では、新規開拓と既存顧客維持の両方の要素が必要となるはずです。
そのような場合には、新規開拓を専門とする営業チームと、既存顧客のフォローと関係深耕を担当するアカウントエグゼクティブチームに役割を分ける「ハイブリッド型」の組織が効果的です。
まずは自社の売上がどこから生まれているのか、会社のどの部分を伸ばしていきたいのかを冷静に分析し、最適な営業体制を考えることが、成功への第一歩となります。
成果を最大化する営業組織の作り方
アカウントエグゼクティブの重要性をご理解いただけた上で、次に考えるべきは「どうすれば、成果を最大化できる営業組織を作れるのか」という、より実践的なテーマです。
単に「アカウントエグゼクティブ」という新しい役職を設けるだけでは、残念ながら組織はうまく機能しません。
それぞれのチームの役割分担を明確にし、その役割に適した人材を確保・育成し、そして既存の組織から新しい体制へスムーズに移行するための準備と計画が不可欠です。
特に、これまで一人の優秀な営業担当者が、新規開拓から既存顧客のフォローまで全てのプロセスを一人で担っていたような組織にとっては、これは大きな変革となります。
この変革を成功に導くためには、経営層が示す明確なビジョンと、具体的なステップに基づいた詳細な実行計画が欠かせません。
ここでは、アカウントエグゼクティブ制度を新たに導入し、営業組織全体のパフォーマンスを最大化するための具体的な方法について解説していきます。
3-1. アカウントエグゼクティブ導入を成功させる3つのステップ
アカウントエグゼクティブ制度の導入を成功へと導くためには、場当たり的ではなく、計画的にステップを踏んで進めることが非常に重要です。
まず「ステップ1:役割の明確化」から始めましょう。
新規開拓を担う営業チームと、アカウントエグゼクティブチーム、それぞれのミッション、担当する顧客の範囲。そして最も重要となるKPIを、誰が見ても分かるように明確に定義します。
誰が、どこからどこまでの範囲に責任を持つのかを曖昧にしないことが、後々のチーム間の混乱や対立を防ぐための鍵となります。
次に「ステップ2:プロセスの設計」です。
新規契約が成立した後、どのタイミングで、どのような情報を添えて、営業担当者からアカウントエグゼクティブへ顧客情報を引き継ぐのか、詳細なルールを設計します。
このとき、CRM(顧客関係管理システム)などのツールを積極的に活用し、情報連携がスムーズかつ漏れなく行える仕組みを整えることが不可欠です。
そして最後に「ステップ3:小規模なチームでの試行」です。
いきなり全社で一斉に導入するのではなく、まずは特定の製品や顧客セグメントに限定して小さなチームを作り、試験的に運用(PoC)してみることを強くお勧めします。
そこで出てきた課題を一つひとつ丁寧に改善し、自社なりの成功モデルを確立してから全社に展開することで、失敗のリスクを最小限に抑えることができるのです。
3-2. 優秀な人材の採用と育成で失敗しないためのポイント
本当に成果の出る営業組織を作るためには、優秀な人材の採用と育成が何よりも欠かせません。
特にアカウントエグゼクティブには、従来の営業担当者とは異なる種類のスキルセットが求められるため、採用や育成の際には、その点を十分に意識する必要があります。
採用活動においては、単にコミュニケーション能力が高いというだけでなく「コンサルティング能力」や「課題解決能力」を持つ人材を見極めることが重要です。
面接の場では、過去に顧客の困難な課題をどのように解決したか、その具体的な事例を深掘りして質問することで、候補者の本質的な能力が見えてくるでしょう。
一方、社内で人材を育成する場合には、業界の最新動向やビジネスモデルについて学ぶ機会を提供したり、課題解決のための思考法を学ぶ研修を実施することが効果的です。
また、すでに高い成果を上げているアカウントエグゼクティブにメンターとして付いてもらう仕組みも、メンバーの成長を加速させる上で非常に有効な手段となります。
3-3. 既存の営業組織からスムーズに移行するための体制構築術
新しい営業体制へと組織を移行させる際、最も注意を払うべき点の一つが、既存メンバーからの深い理解と協力を得ることです。
特に、これまで新規開拓から顧客フォローまで一人で全プロセスを担当してきたエース級の営業担当者ほど、自分の役割が限定され心理的な抵抗を感じる可能性があります。
こうした現場からの反発や組織の混乱を避けるためには、経営層やマネジメント層による、丁寧で粘り強いコミュニケーションが不可欠です。
「なぜ今、組織を変える必要があるのか」という変革の背景、そして会社全体とメンバー個人の双方に、どのようなメリットをもたらすのかを発信することが重要になります。
また、新しい役割に応じた明確なキャリアパスやインセンティブ制度、そして公正な評価制度を具体的に示すことで、モチベーションを高めることができます。
例えば、アカウントエグゼクティブとしての成功が、より大きな顧客を担当するシニアAEや、チームを率いるマネージャーへの道に繋がることを明確に示すのです。
組織変更は、単なる仕組みの変更ではなく、そこで働く人々の心を動かすプロセスであることを決して忘れてはいけません。
次世代の営業組織で事業成長を加速させる
アカウントエグゼクティブと営業が、それぞれの専門的な役割に専念し、互いに連携する体制を築くことは、単なる業務効率化以上の、計り知れない価値を生み出します。
それは、顧客一人ひとりとの関係性を極限まで深め、激しい市場の変化にも柔軟に対応できる、しなやかで強い営業組織への進化を意味するのです。
新規開拓チームが生み出した勢いを、アカウントエグゼクティブチームによる既存顧客の育成によって、持続的な成長へと確実につなげていく。
この理想的な好循環を生み出すことができれば、会社の事業成長は間違いなく大きく加速するでしょう。
もちろん、組織を再構築する道のりには、様々な困難が伴うことも事実です。
しかし、その先には大きな可能性が広がっています。
これからの時代を勝ち抜くためには、自社のビジネスモデルに最適化された「次世代の営業組織」を構築するという経営的な視点が不可欠です。
最後に、この大きな変革を成功に導くためのヒントと、具体的なアクションプランについて触れていきます。
4-1. 営業とアカウントエグゼクティブの連携で生み出す相乗効果
新規開拓を担う営業チームと、既存顧客を育てるアカウントエグゼクティブチームが効果的に連携することで、1+1が2以上になる、非常に大きな相乗効果が生まれます。
まず第一に、役割を分担することで、それぞれの専門性が格段に高まります。
営業は新規開拓のスキルを徹底的に磨き、アカウントエグゼクティブは顧客の課題解決能力や関係構築力を高めることに集中できるため、組織全体のパフォーマンスが底上げされるのです。
また、顧客体験の一貫性が保たれることも、見逃せない大きなメリットです。
営業担当者が商談の場でお客様と約束したことを、引き継いだアカウントエグゼクティブが確実に実行することで、お客様は安心し、会社全体への信頼感を深めてくれます。
さらに、対話の中から得た新たなニーズを営業チームにフィードバックすることで、営業はより市場の現実に即した、効果的なアプローチが可能になります。
このように、両チームが情報を密に共有し、互いの活動を支え合う文化を醸成することで、顧客満足度の向上と事業成長を同時に実現する成長サイクルが回り始めるのです。
4-2. 営業組織の構築・再構築で直面する課題と解決のヒント
新しい営業組織をゼロから構築したり、既存の組織を再構築したりする際には、多くの企業がいくつかの共通した課題に直面することがあります。
例えば「営業とアカウントエグゼクティブの役割分担が曖昧で、責任の押し付け合いが起こってしまう」といった問題です。
これらの困難な課題を乗り越えるためには、本記事で解説してきたように、導入前に役割とKPIを明確化し、情報共有のプロセスを具体的に設計しておくことが極めて重要です。
また、経営層が変革の旗振り役となり、その目的とビジョンを粘り強く、そして情熱を持って伝え続けることで、組織の一体感を醸成する必要があります。
最初から完璧な組織を目指すのではなく、まずはスモールスタートで試行錯誤を繰り返しながら、自社にとっての最適解を見つけていくという柔軟な姿勢も大切です。
課題は必ず発生するものと前向きに捉え、問題が起きた際に迅速に対応できる体制をあらかじめ整えておくことが、変革を成功に導くためのヒントと言えるでしょう。
4-3. 新規営業組織の立ち上げで描く、成功へのロードマップ
ここまで、アカウントエグゼクティブと営業の違いから、成果を最大化する組織の作り方まで、詳しく解説してきました。
しかし、理論は分かっても、実践するとなると「具体的に何から手をつければいいのか分からない」と、アクションプランを描く段階で悩んでしまうことも多いと思います。
特に、全く新しい事業を立ち上げる際の営業組織の構築は、その事業の成否を大きく左右する、非常に重要な要素です。
もしあなたが、営業組織の新規構築や再構築、あるいは新規事業の立ち上げそのものに課題を感じているのであれば、ぜひ私たちが特別にご用意した「新規事業立ち上げ支援」ソリューションをご活用ください。
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