2026年法改正?勤務時間インターバルの義務化と対策について解説

2026年法改正?勤務時間インターバルの義務化と対策について

2026年を目途に労働基準法などの改正が検討されており、勤務時間インターバル制度の義務化の可能性が議論されています。「勤務時間インターバル制度」は、従業員の健康確保と生産性の維持向上の観点から極めて重要であり、企業は早急な対策が求められます。本記事では、制度の基礎知識から義務化を巡る具体的な動向、そして法改正を見据えた対策ステップまでを詳細に解説します。

目次

    もっと見る▼

    本記事の結論:勤務時間インターバル義務化に備え、企業がいますぐ取るべき対策           

      勤務時間インターバル制度が義務化された場合、企業が負うリスクは非常に大きくなります。法改正による罰則を回避し、競争力を維持するために、以下の対策の検討が必要です。
    • 現状把握の徹底: PCログなどの客観的なデータに基づき、従業員の終業から始業までのインターバル時間を全社的に把握・可視化すること。
    • 就業規則の先行整備: 法改正に先駆けて、インターバル時間を確保するための具体的なルールを就業規則に盛り込み、試行運用を開始すること。
    • 業務フローの根本改善: インターバル不足が発生する部署・従業員について、業務の配分見直しや属人化解消を進め、根本的な残業抑制策を実行すること。
    • 罰則リスクの回避: 義務化は過労死防止など健康確保を目的とするため、単なる努力義務ではないことを認識し、リスク回避の準備を進めること。

    勤務時間インターバル制度の基礎知識           

    勤務時間インターバル制度の検討中の様子        
       

    1-1. 制度の定義と目的:企業が確保すべき「休息時間」とは

    勤務間インターバル制度とは、「終業時刻から次の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間を確保しなければならない」とするルールのことです。一般的に「9時間以上」または「11時間以上」のインターバルを設けることが議論されています。

    この制度の主な目的は以下の4点にあります。

    • 従業員の健康確保と過重労働の防止: 休息時間を強制的に確保することで、疲労の蓄積を防ぎ、健康障害やメンタルヘルス不調を未然に防止します。
    • 労働生産性の維持向上: 十分な休息は集中力の回復を促し、結果的に労働の質を高め、生産性の維持・向上につながります。
    • ハラスメント・ミス・事故の削減: 疲労による注意力の低下を防ぐことで、ヒューマンエラーによるミスや事故、さらには精神的な余裕のなさから生じるハラスメントのリスクを減らします。
    • 離職防止: 労働環境の改善と健康への配慮を示すことで、従業員の満足度が向上し、結果的に優秀な人材の離職を防ぎ、定着率を高めます。

    1-2. 現状の法的な位置づけと日本の低導入率

    現在、勤務時間インターバル制度は、労働基準法で義務化されている制度ではありません。

    現行の法律では、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の第2条に、事業主の努力義務として規定されています。

    労働時間等設定改善法 第2条(出典:https://laws.e-gov.go.jp/law/404AC0000000090


    国は助成金制度などを通じて導入を促していますが、厚生労働省の調査(出典:令和6年就労条件総合調査)によれば、制度を導入している企業の割合は5.7%に留まっており、全体的な低迷が日本の大きな課題となっています。

    1-3. 休息時間不足がもたらす企業リスク:法的責任と健康経営への影響

    インターバル制度の導入有無にかかわらず、休息時間不足は企業に以下の深刻なリスクをもたらします。

    • 安全配慮義務違反リスク: 企業には、従業員が安全で健康に働けるよう配慮する義務があります。休息が不足し、過重労働によって従業員が健康被害やメンタルヘルス不調をきたした場合、企業はこの義務違反を問われ、損害賠償請求の対象となる可能性があります。
    • 労働生産性の低下: 疲労状態での労働は、ミスの増加、判断力の低下、作業効率の悪化を招き、企業の生産性全体を押し下げます。
    • 企業イメージの低下: 過重労働が原因で労災や健康問題が発生した場合、企業名が公表されたり、SNSなどでネガティブな情報が拡散されたりすることで、採用活動や取引先との関係にも悪影響を及ぼします。

    勤務時間インターバル義務化検討の背景と動向           

    2-1. 義務化検討の背景:EU指令など国際的な流れ

    日本が勤務時間インターバル制度の義務化を検討している背景には、国際的な労働環境の基準があります。特に、EUでは、1993年に制定されたEU労働時間指令に基づき、原則として「24時間ごとに最低11時間の連続した休息」が義務付けられています。

    このEUの基準は、多くの先進国における労働時間規制のモデルとなっています。日本においても、国際競争力の維持や、働き方改革をさらに推進する観点から、この11時間という基準を念頭に置き、現行の「努力義務」から「義務」へ引き上げる議論が加速しています。

    2-2. 義務化を巡る厚生労働省の検討会における議論の現状

    厚生労働省の「労働政策審議会」などでは、義務化の是非や具体的な制度設計について活発な議論が行われています。主な論点となっているのは以下の点です。

    • 義務化の時期: 2026年を念頭に、働き方改革関連法の施行状況を踏まえた調整が進められています。
    • インターバル時間: EU基準に近い11時間の確保を原則としつつ、業種や業務の特性に応じて9時間を最低ラインとする案が有力視されています。
    • 適用範囲: 大企業から義務化を開始し、その後、中小企業へと段階的に適用範囲を拡大する案が現実的とされています。

    これらの議論は、単なる労働環境の改善に留まらず、日本社会全体における「過労死を生まない社会」の実現に向けた重大な転換点と位置づけられています。

    2-3. 義務化された場合に想定されるルールと「罰則規定」導入の可能性

    インターバル制度が努力義務から義務に移行した場合、最も大きな影響は罰則規定の導入です。

    義務化された場合の罰則については、今後の法改正の議論で定められる予定です。参考として、労働基準法における時間外労働の上限規制違反には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます(労働基準法第119条)。

    【独自見解】罰則は厳格に適用される可能性が高い

    本改正は単に義務を課すだけでなく、従業員の生命と健康を守るという強い社会的要請に基づくものです。そのため、もし義務化が実現した場合、企業がインターバル時間を形骸化させたり、適切な記録を残さなかったりした際の罰則は、厳格に適用される可能性が高いと言えます。企業は「努力義務だから」という従来の意識を完全に捨て、法遵守の最重要課題として捉える必要があります。

    義務化対応への課題とは?           

    会議中のビジネスパーソンたち        
       

    勤務時間インターバル制度を遵守するための最大の課題は、「終業時刻の正確な特定」です。休息時間のスタート地点が曖昧であれば、制度の運用自体が機能しなくなってしまうからです。

    3-1. 勤怠管理システムだけでは不十分な「打刻時間」と「実態」の乖離

    多くの企業が導入している勤怠管理システムやタイムカードは、従業員の自己申告に基づく「打刻時間」を記録するものが一般的です。しかし、この打刻時間と実際の労働実態には、大きな乖離が生じがちです。

    • サービス残業/持ち帰り残業: 打刻後に業務を継続したり、自宅に持ち帰ってPC作業を行ったりする「隠れ残業」は、打刻時間だけでは捕捉できません。
    • みなし残業: 営業職などのみなし労働時間制が適用される場合、実際の業務終了時刻が客観的に記録されないため、インターバル時間が不足しているかどうかの判断が難しくなります。

    打刻時間だけを基準にインターバル時間を判断すると、実際には休息時間が9時間未満であるにもかかわらず「遵守している」と誤認し、従業員をリスクに晒し続けることになります。

    3-2. 客観的なデータに基づくインターバル把握の必要性

    勤務時間インターバル制度の運用において、最も重要なのは「従業員がいつ業務を終了したか」という終業時刻の客観性です。

    PCログは、従業員が実際に業務に従事していた時間を客観的に記録するデータです。このPCログを活用することで、以下のことが可能になります。

    • 正確な終業時刻の特定: 打刻時間ではなく、PCのシャットダウンや操作履歴の停止をもって終業時刻とみなすことで、隠れた残業時間を含めたインターバル時間を正確に測定できます。
    • 不足インターバル時間の可視化: どの従業員が、どの部署で、週に何回インターバル時間が不足しているかを定量的に把握し、義務化への対応が必要な重点部署を特定できます。
    • 深夜・早朝業務の監視: 規定のインターバル時間を侵食する早朝出勤や深夜残業の頻度を把握し、管理者にアラートを出すなど、未然防止の仕組みを構築できます。

    PCログで「実態」を把握する「MITERAS仕事可視化」

    客観的な労働時間把握の必要性が高まるなか、「MITERAS仕事可視化」は、勤務時間インターバル制度の確実な運用を可能にする強力なソリューションです。

    「MITERAS仕事可視化」の強み

    • 客観的な終業時間の測定: PCログから業務の実態を把握し、打刻時刻とPC作業終了時刻の乖離を可視化。隠れた業務も客観的データを取得できるため、インターバル時間を正確に測定できます。
    • 仕組みで長時間労働を抑止: 勤務終了時にポップアップを表示することで自主的に業務を終了できます。過重労働を未然に防ぐ仕組みとして有効です。

    義務化対応を単なる手間ではなく、全社的な業務改善のチャンスと捉えるためにも、まずは客観データによる現状把握から着手することをおすすめします。

    MITERAS仕事可視化の詳細ページを見る


    義務化を見据えた企業が今すぐ実行すべき4つステップ           

    課題解決のイメージ        
       

    インターバル制度の義務化は待ったなしの状況です。企業は以下のロードマップに従い、段階的に対策を進める必要があります。

    4-1. ステップ1:現状のギャップ分析と目標インターバル時間の設定

    対策の第一歩は「知る」ことです。まず、客観データを活用して、従業員ごとのインターバル時間の充足状況を詳細に分析します。

    分析項目:

    • 全従業員のうち、インターバル時間が9時間未満/11時間未満の従業員の割合。
    • 特にインターバル不足が発生している部署、役職、業務内容。
    • 不足インターバル時間が慢性化している特定個人や業務の特定。

    この分析結果に基づき、法改正の動向を先取りし、「最低9時間、可能であれば11時間」といった具体的な目標インターバル時間を設定します。

    4-2. ステップ2:就業規則の整備と従業員への「義務化」の周知

    ギャップ分析が終わったら、制度を正式に社内に導入する準備を整えます。

    • 就業規則への明記: 「終業から始業までの間に〇時間以上の休息時間を確保する」旨を就業規則に明確に記載します。また、インターバルを確保するための具体的なルール(例:深夜帯のメールやチャットの禁止規定)も盛り込みます。
    • 全従業員への周知: 制度の目的とルール、そして法改正による義務化と罰則リスクについて、研修や説明会を通じて周知徹底します。特に管理職に対しては、部下のインターバル時間を遵守させるための権限と責任を明確に与えることが重要

    4-3. ステップ3:業務フロー・シフトの抜本的見直し

    インターバル不足が慢性化している根本原因である「業務量」と「業務の偏り」を解消します。

    • シフトの見直し: 業務負荷が高い部署については、シフト制を導入し、夜間・早朝作業が発生しないような人員配置を検討します。
    • 業務の平準化と属人化解消: 特定の個人に業務が集中しないよう、マニュアル化や多能工化を進めます。インターバル不足が特定の属人的なスキルに起因する場合、その解消が最優先課題となります。
    • 業務量そのものの削減: 定型業務のRPAによる自動化や、外注化・アウトソーシングを検討し、従業員一人あたりの業務量自体を減らす抜本的な対策を実行します。

    4-4. ステップ4:PDCAサイクルによる継続的な改善と例外ルールの運用

    制度導入はゴールではなく、スタートです。客観データに基づき、PDCAサイクルを回し続けることが不可欠です。

    • 効果測定とフィードバック: PCログなどの客観データでインターバル時間の充足率を定期的に測定します。改善が見られない部署や個人に対しては、個別面談や業務プロセスの再設計など、追加の対策を講じます。
    • 例外規定の運用: 突発的なシステム障害や大規模な災害など、やむを得ない事由でインターバルを確保できないケースに備え、例外規定を設けます。ただし、この例外規定は濫用を厳しく禁止し、例外適用時にはその理由、期間、事後措置を詳細に記録し、管理体制を徹底する必要があります。

    勤務時間インターバル義務化は「企業競争力」強化の機会

    勤務時間インターバル制度の義務化は、企業にとって「いつか来る」リスクではなく、「すでに始まっている」課題です。

    この義務化への対応は、単なる法遵守や罰則回避のためだけでなく、従業員の健康を守り、結果的に企業のリスクマネジメントを強化し、従業員エンゲージメントを向上させる絶好の機会と捉えるべきです。健康な従業員こそが、企業の未来の競争力の源泉となります。

    インターバル制度を正しく、かつ実効性を持って運用するためには、客観的なデータに基づく労働時間の把握が不可欠です。

    「MITERAS仕事可視化」は、従来の勤怠管理の限界を超え、PCログという客観的な事実に基づき、義務化への確実な対策と健康経営の推進を両立するための強力なソリューションです。法改正に先駆け、労働時間の真の実態を把握し、未来の企業競争力を高める第一歩を踏み出しましょう。

    MITERAS仕事可視化の詳細ページを見る

    このページをシェアする

    • Xシェアボタン
    • Facebookシェアボタン
    • Linkedinシェアボタン