【無料】二次検査の「追跡・督促」が回る、健診運用の全体像
健康診断の二次検査とは何か
まずは健康診断の二次検査から見ていきましょう。そもそも健康診断の二次検査とは、健康診断において「健康状態に何らかの異常や問題がみられた場合に受ける検査」です。
健康診断は、疾病の予防と早期発見を目的としているため、異常が見つかったからといってすぐに「病気である」ということではなく、さらに詳しい検査が必要になります。その際に行うのが二次検査なのです。
1-1. 「要再検査」「要精密検査」の判定は二次検査が必要
二次検査が求められるのは、健康診断結果で「要再検査」「要精密検査」と判定された場合です。受診する医療機関によっても異なりますが、以下のような区分で判定されることが多いでしょう。
- A:異常なし
- B:軽度異常
- C:要再検査・生活改善
- D:要精密検査・治療
- E:治療中
※参考:日本人間ドック・予防医療学会「検査表の見方」
※参考:日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
この区分において二次検査が必要なのは「C:要再検査・生活改善」と「D:要精密検査・治療」です。
「C:要再検査・生活改善」は、「検査でみられた数値が正しいかを調べるために再検査を行う必要がある」という判定です。
再検査が必要な理由としては、健康診断でみられた検査の値が、身体の病的な原因ではなく、一時的に上昇しただけの可能性があるからです。例えば、血糖値の検査では、検査前の食事や運動の影響で高値となってしまうことがあります。
再検査を行うことで、外的要因を除いた結果から疾患の有無を判断することができます。結果には、「3ヵ月後に再検査」「1年は要経過観察」というように、具体的な指示が記載されているケースが多いでしょう。
「D:要精密検査・治療」は、「何らかの異常を認める所見がみられるため、さらに詳しい検査を行う必要がある」という判定です。
病院やクリニックで専門の医師による詳しい検査を行い、どういった病気が影響してその診断となったのかを調べます。早急な治療が必要なケースもあるため、可能な限り受診を勧めなければならない状態といえるでしょう。
「A:異常なし」「B:軽度異常」であれば、ほぼ健康な状態といえます。異常という単語を含みますが、「B:軽度異常」は、やや高い数値だが異常とされる範囲ではないという場合に判定される区分です。
また、「E:治療中」はすでに治療を受けているため、二次検査を勧める必要はないといえます。
1-2. 二次検査が必要なのは生活習慣病に関する項目が多い
厚生労働省から発表されている、異常所見がみられた割合を示す「有所見率」のデータを項目別にみると、割合が高い上位5項目は以下の通りです。(令和3年度数値)
血中脂質や血圧、肝機能、血糖値といった生活習慣病にかかわる項目において、有所見率が高いことが特徴です。
これらの疾患は自覚症状がないまま進行しやすく、放置すると動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などの重大なリスクにつながります。血糖値が高い場合は糖尿病やすい臓がんにかかる可能性もあります。
つまり、二次検査が必要なのは「生活習慣病」に関する項目が多いということが分かります。
ここまで押さえた上で、次に気になるのは「会社としてどこまでやれば良いのか」ではないでしょうか。整理の為には二次検査フォローを漏れなく回すための「健診業務の全体像(STEP)」を先に整理しておくと、判断と運用がスムーズです。
健康診断の二次検査は会社の義務になるのか?
生活習慣病に関する項目が多い二次検査ですが、受診させること自体は会社としての法的な義務にはあたりません。
労働安全衛生法などの法令においても、二次検査の受診勧奨に努めるよう定められてはいますが、直接的な罰則規定はないのです。
ただ、厚生労働省の指針においては「受診を勧奨することが適当」と明記されており、もし従業員に二次検査の指示が出ているのにもかかわらず二次検査を受けないまま放置していると、安全配慮義務違反に該当する可能性もあります。
「安全配慮義務」とは、会社が従業員の安全を守るために、就業上で必要となる措置や配慮を講じる義務のことです。安全配慮義務違反に該当するかどうかは、「予見可能性」と「回避可能性」の2つのポイントから判断されます。
健康管理に関する事項を当てはめると、以下のように考えられるでしょう。
- 予見可能性……従業員の健康を損なう事態が予測できたか
- 回避可能性……従業員の健康を損なう事態を回避するための手段がなかったのか
二次検査を受診しないまま放置してしまうと、健康を損なうことは容易に想像できることです。また、そもそも受診勧奨や受診の周知などの対策を講じていれば、病気の発症は回避できたことでしょう。
そのため、会社に義務はないといっても、何もしないということは安全配慮義務違反となる可能性があります。ですから、できるだけ受診勧奨を行うことが望ましいといえるのです。
重要なのは、「受診させ切ること」だけでなく、会社として適切に対応したと説明できる状態(証跡が残る運用)を作ることです。
受診勧奨の連絡経路・時期・未受診フォローを「型」にすると、担当者の心理的負担も大きく減らせます。
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二次検査(再検査)を受けない従業員への対応と結果提出の考え方
一次健診は健康状態のスクリーニングで、判定が「要精密検査」「要再検査」のまま放置すると、治療が必要な状態の見落としや重症化につながりかねません。会社には従業員の健康確保に配慮し、受診を促す体制を整えることが求められます。
一方で、一般健康診断においては、二次検査の受診や結果提出を法律で一律に強制できる直接の規定はなく、会社としては「受診を促す仕組み」と「結果の扱いのルール」をセットで運用することが現実的です。
なお、有害業務に従事する労働者を対象とした特殊健康診断については、有機溶剤中毒予防規則や石綿障害予防規則など特定の法令に基づき、対象業務によっては事業者に対して二次検査(再検査や精密検査)の実施が義務付けられているものがあります。対象業務に応じた法令の確認が必要です。
3-1.「要精密検査」「要再検査」なのに受けないとどうなる?行かない従業員への会社としての対応
二次検査は本人の判断で先延ばしになりやすいからこそ、会社が未受診者を把握し、受診を勧奨する流れを作っておくことが大切です。
厚生労働省の指針でも、一次健診結果から二次健康診断の対象者を把握し、受診を勧奨するとともに、結果を提出するよう働きかけることが適当とされています。
進め方は、以下例のように段階を決めて運用すると回しやすくなります。
- 対象者と受診目安を示す
- 相談窓口を用意する
- 必要に応じて産業医等につなぐ
費用面の案内による受診勧奨も有効ですが、誤解が出ない説明が必要です。
労災保険の「二次健康診断等給付」は、一次健康診断で血圧・血中脂質・血糖・腹囲またはBMIの4項目すべてに「異常の所見」がある場合など、要件を満たした人が、二次健康診断と特定保健指導を年度内1回、無料で受けられる制度です。
一次健診の医師がいずれかの項目を『異常なし』と判定した場合でも、その後産業医等が就業環境等を総合的に勘案し『異常の所見がある』と認められると診断した場合は、産業医等の意見を優先し当該検査項目について異常の所見があるものとされ、給付の対象となります。
ただし、脳・心臓疾患の症状がある人は対象外で、労災保険の特別加入者も対象になりません。また、請求は一次健康診断の受診日から3か月以内が原則で、受診できる医療機関も指定の「健診給付病院等」に限られます。
検査費用と特定保健指導は無料(現物給付)ですが、指定医療機関までの交通費は原則として自己負担になります。
3-2.再検査の結果は会社にバレる?結果提出の扱いとプライバシー
二次検査の結果をどう扱うかは、従業員の不安につながりやすい部分です。健康診断結果を含む健康情報は要配慮個人情報に当たり、取得には原則として本人の同意が必要です。
そのため、二次検査の詳しい結果(要配慮個人情報)を会社が取得・保存する場合や、それを上司へ共有する場合は、本人の明確な同意を得る必要があります。
社内で共有する範囲も絞るのが基本です。必要なのは、病名や数値を広く共有することではなく、就業上の配慮が要るか、勤務上の制限が必要かといった「安全に働くための情報」です。
こうした整理を、取扱規程などで誰が何を扱うかまで明確にし、本人に説明しておくことが、安心して受診や結果提出につながります。
健康診断で二次検査の指示が出たらどう対応すべきか
二次検査の指示が出たら、速やかな受診を勧奨する必要があります。受診勧奨には、下記の3つの対応を意識すると良いでしょう。
対応(1)勧奨方法についてのオペレーションを明確にする
対応(1)勧奨方法についてのオペレーションを明確にする
「従業員にどのような形で勧奨するのか」という社内のオペレーションを明確にしておくと、未受診の従業員への通知漏れを防ぐことができます。
社内のイントラネットや社内報に載せる、お知らせを送るなど、「どのような形で、誰が、どのタイミングで、本人に連絡するのか」をあらかじめ決めておきましょう。
ここが曖昧だと「通知漏れ」と「督促の属人化」が起き、毎年同じ消耗が繰り返されます。健診業務全体をSTEPで分解しておくと、二次検査の追跡も設計しやすくなります。
また、社内に保健師がいる場合には、適宜連携し従業員個人に連絡して保健指導を行ってもらうことも有効です。
一般的に、健康診断から時間が経つと二次検査の必要性に対する理解が薄れ、医療機関の予約や受診につながりにくい傾向があるため、特に重要になるのは、受診勧奨を促す時期です。
受診時期と受診行動促進要因に着目したアンケート調査によれば、医療機関で人間ドックを受診した人の90.9%が、「健康診断後3カ月以内」に受診していたことがわかっています。ですから、健康診断後は「3ヵ月以内」を目安に受診を勧奨し、二次検査につなげていくことが重要でしょう。
対応(2)社内研修で健康管理の必要性を伝える
対応(2)社内研修で健康管理の必要性を伝える
「健康管理の必要性」を伝える内容を社内研修に盛り込むことも有効です。伝える際には、階層別に伝えていくと良いでしょう。
例えば、健康に対する心配が少ない20代の従業員に対しては、「若年層でもかかるリスクのある疾患」「20代のうちに検査しておくと良い項目」などの内容を説明します。
一方でリーダー研修の場合には、「部署メンバーの健康管理方法」などについて伝えると良いでしょう。いずれにしても、全階層に向けると抽象的になりますので、その階層・年齢層にあった健康管理の必要性を具体的に伝えることが理想的といえます。
対応(3)健康管理について相談できる体制を作る
対応(3)健康管理について相談できる体制を作る
二次検査の受診率向上のためには、健康について相談できる体制作りも重要です。
「産業衛生学雑誌」による1,000人以上の規模の会社を対象とした調査では、受診につながる要因として以下の2つが示されています。
- 健康上の相談をできる人がいる
- 定期的な受診経験がある(かかりつけ医がある)
この2つの要因からは、「個別」に「専門的な」勧奨ができる存在が受診率の向上につながるものと考えられます。会社において、この2つの役割を担うのは保健師をはじめとした産業保健スタッフだといえます。
産業保健スタッフに相談できることが従業員に周知されていない場合は、健康診断時の案内に載せたり、社内報で周知したりすると良いでしょう。
※参考:産業衛生学雑誌「健診結果に基づく事業場労働者の医療機関受診につながる要因」(PDF)
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健康診断の二次検査の費用は誰がどのくらい負担するのか
前述した通り、二次検査を行う義務は法的には明確に規定されていませんが、会社によっては二次検査の費用を負担する制度を設けていることがあります。
では、二次検査の費用は、どの範囲まで負担する義務があるのでしょうか。
5-1. 二次検査費用を負担する義務はない
繰り返しになりますが、会社には二次検査を行う義務はありませんので、原則的に費用を負担する義務は課せられていません。
二次検査のうち、どの範囲の検査まで負担するかは会社側の判断に委ねられているのです(特殊健康診断で二次検査が義務付けられている場合は除く)。
5-2. 基本的には従業員の健康保険適用や自費により受診する
会社に費用負担の義務はありませんので、基本的には従業員が自分の健康保険を利用するか、自費で検査を行うことになります。
二次検査で行われる検査項目のうち、3割負担時の費用の目安は以下の通りです。検査の結果、他の検査や薬の処方を受けた場合には、下記の費用に追加されることがあります。
- 血液検査:2,500円~3,000円
- 尿検査:1,000円~1,500円
- MRI:5,000~20,000円(撮影する部位により異なる)
- CT:6,000円~13,000円(撮影する部位により異なる)
- 超音波検査:1,000~3,000円
- 胃カメラ(胃内視鏡)検査:4,000円
- 大腸カメラ(大腸内視鏡)検査:5,000~10,000円
また実務面では、医療機関ごとの請求形式の違いや、従業員の立替、精算、検査結果の回収、労働基準監督署への報告など、処理が「地味に重い業務」になりがちです。
健診業務を通年で見渡して「精算や管理が詰まるポイント」を把握し、健康経営の観点から効率的な制度設計を行うことが推奨されます。
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二次検査の費用負担を軽減するためには
会社側に費用負担の義務がないからといって、二次検査の費用を従業員に負担してもらうのは、受診率の低下につながることがあります。
従業員からすると、いくら健康を気遣う目的であっても費用負担をするのは抵抗感が生まれやすいでしょう。ですから、二次検査の費用を会社が負担することで受診率はアップする可能性が高まります。
費用負担に関しては、労災保険の給付制度である「二次健康診断等給付」を活用することがおすすめです。
二次健康診断等給付とは、定期健康診断をはじめとした一次健康診断で異常所見がみられた従業員に対して、費用を負担する制度であり、二次健康診断(二次検査)と特定保健指導を年に1回まで無料で受診することができます。
ただし、この健診は脳血管や心臓の状態に異常がみられるかどうかを検査したり、予防を図ったりする目的で行われます。脳血管や心臓以外の部位に関する異常は対象外となりますので、注意が必要です。
具体的な条件については、次の項で説明します。
6-1. 二次健康診断等給付の条件
二次健康診断等給付の給付には、以下の条件を満たす必要があります。
条件(1)一次健康診断において、下記の4つの検査項目のすべてで異常所見がみられること
- 血圧検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 腹囲の検査またはBMIの測定
条件(2)脳・心臓疾患の症状を有していないこと
条件(3)労災保険の特別加入者でないこと
「条件(3)」にある「労災保険の特別加入」とは、労働者以外の自営業者や事業主、特定業務に就く人を対象とした制度です。海外に派遣されている従業員も加入できるため、二次健康診断等給付を申請する時には、加入状況を調べておくと良いでしょう。
6-2. 給付対象となる二次健康診断と特定保健指導の内容
ただし、厚生労働省が指定する医療機関で受けた場合に限られますので、注意が必要でしょう。
【二次健康診断】
- 空腹時血中脂質検査
- 空腹時血糖値検査
- HbA1c検査(一次健康診断で実施していない場合のみ)
- 負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)のいずれか一方の検査
- 頸部超音波検査(頸部エコー検査)
- 微量アルブミン尿検査(一次健康診断において尿蛋白検査の所見が疑陽性または弱陽性の場合のみ)
- 栄養指導(食習慣の改善や摂取カロリーのコントロールについて)
- 運動指導(必要な運動量や運動方法について)
- 生活指導(飲酒・喫煙・睡眠などの生活習慣について)
効果的な受診勧奨をするならパーソルビジネスプロセスデザインへ
本記事では、健康診断の二次検査が必要になった場合の費用や受診勧奨について説明してきました。もし、健康診断実施に伴って受診勧奨をしたい場合には、私たちパーソルビジネスプロセスデザインへお任せください。
当社の「受診勧奨プログラム」なら、厚生労働省の「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」に示されている、「二次健康診断の受診勧奨」を代行させていただきます。生活習慣と関連のある血液検査の結果に対して受診勧奨を実施し、早期に治療開始・生活習慣の見直しを行うことで、将来的な医療費増大や企業における生産性低下などを防ぐことができるはずです。
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