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在宅勤務における労働時間管理の法的課題と重要性
在宅勤務の労働時間管理は、「客観性の確保」と「従業員の健康保護」の二つの側面から非常に重要です。
労働基準法が定める企業側の管理責任とリスク
『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』により、企業は原則として、労働者の労働時間を客観的な方法で把握しなければなりません。この「客観的な方法」とは、タイムカード、PCの使用時間の記録、入退室記録など、労働者の自己申告に依存しない記録手段を指します。
企業は原則として、労働者の労働時間を客観的な方法で把握しなければなりません。
在宅勤務では、PCのログイン・ログオフ時間や操作ログが、この客観的記録の主要な手段となります。これを怠り、労働時間の過少申告や不正確な管理が続くと、企業は以下の法的リスクに直面します。
- 残業代の未払いリスク:申告された時間と実態が乖離していた場合、後から高額な未払い賃金を請求される可能性がある。
- 安全配慮義務違反リスク:労働時間を正確に把握できていないと、過重労働や長時間労働を把握できず、従業員の健康状態が悪化した場合に「安全配慮義務違反」を問われる可能性がある。
- 労働基準監督署の是正勧告:労働時間管理の不備を指摘され、是正勧告を受ける可能性がある。
在宅勤務で従業員を法的に守り、同時に企業の法的リスクを回避するためには、労働時間管理のルール化と客観的な記録システムの導入が不可欠です。
在宅勤務の労働時間を適正に管理する7つのステップ
労働時間管理の形態を定めたら、次にそのルールを実効性のあるものにするための具体的な手順が必要です。以下に、会社が取るべき7つの実践ステップを解説します。
2-1. 就業規則への明記とルールの周知徹底
在宅勤務制度を開始する際、就業規則または在宅勤務規定に、労働時間管理に関する以下の事項を必ず明記し、全従業員に周知徹底します。
- 適用される労働時間制度。
- 始業、終業、休憩時間の報告方法。
- 労働時間中に発生した「中抜け」「私用外出」の定義とその取り扱い。労働時間から控除する方法を明確にします。
- PCログなどの客観的な記録手段を導入することと、その利用目的である労務管理や健康管理を明示すること。
2-2. PCログなどの客観的な記録方法の導入と徹底
労働時間の客観性を担保するために、以下のいずれか、または複数を組み合わせたシステムを導入し、運用を徹底します。
- システム打刻:勤怠管理システム上でのWeb打刻。
- PCログ記録ツール:PCの起動・シャットダウン、アプリケーションの利用状況、キーボード・マウスの操作履歴などを自動で記録し、「PCの稼働時間=実労働時間」として把握する。
- GPS機能の利用:業務外利用のリスクがあるため、原則避けるべきです。
客観的な記録は、自己申告が正しいかどうかを確認するための証拠として活用します。
2-3. 始業・終業・休憩時間の報告と確認方法
従業員が確実に労働時間を報告し、管理者が確認できるフローを確立します。
【時間区分と確認事項の例】
- 始業:勤怠システムで打刻、または専用チャットで申告。管理者はPCログや稼働開始時間との乖離がないかを確認。
- 休憩:休憩開始・終了時刻の打刻/申告。管理者は休憩時間を超えてPCが稼働していないかを確認。
- 終業:勤怠システムで打刻。管理者は打刻後のPCシャットダウン時刻や操作ログがないか(サービス残業の防止)を確認。
2-4. 時間外労働の原則禁止と事前申請制
在宅勤務では、管理者の許可なく時間外労働を行う「サービス残業」のリスクが特に高まります。
- 原則:事前の申請・許可がない時間外労働は原則として禁止することを明記します。
- 運用:時間外労働が必要な場合は、事前に上長に申請し、承認を得た上で勤務を開始させる仕組みを徹底します。
これにより、労働時間の管理が容易になり、無許可の長時間労働を防ぐことができます。
2-5. 中抜け・私用外出時の取り扱いと指示
在宅勤務特有の課題が、通院や育児、私用による「中抜け」です。これを放置すると、正確な労働時間の把握が不可能になります。
- ルール化:中抜けの際は、必ず勤怠システムで「私用外出」や「離席」の打刻をさせ、その時間を労働時間から除外するルールを設けます。
- 指示:休憩時間と中抜けの違いを明確に説明します。中抜けの時間については、企業から業務指示を出さないように配慮し、私用時間であることを明確にします。
2-6. 労働時間の定期的モニタリングと過重労働対策
客観的な記録と自己申告のデータを定期的にモニタリングし、以下の対策を講じます。
- 週次・月次のチェック:労働時間が法定時間である週40時間や1日8時間を超える見込みがないか、残業時間が上限を超えそうになっていないかを毎週チェックします。
- アラート設定:PCの稼働時間が規定の終業時間を超えた際に、本人と管理者にアラート通知を自動で行うシステムを導入する。
- 面談:長時間労働が続く従業員に対しては、管理者が業務量や健康状態についてヒアリングする面談を速やかに実施します。
2-7. 自己申告と実態に乖離がある場合の対応
PCログなどの客観的な記録と、従業員の自己申告(打刻)に大きな乖離がある場合、それを放置してはいけません。
- 事実確認:まずは本人からヒアリングを行い、乖離の理由、例えば休憩時間中のPC操作や終業後のサービス残業などを確認します。
- 記録の訂正:実態に応じて、労働時間を客観的なデータに合わせて訂正し、その記録を保存します。
- 是正指導:サービス残業をしていた場合は、ルール通りに事前申請を行うよう指導します。
在宅勤務で導入する労働時間管理ツールの選び方と活用ポイント
在宅勤務の労働時間管理を法令遵守かつ効率的に行うためには、適切な管理ツールの導入が最も有効です。ここでは、ツールの選び方と活用ポイントを解説します。
3-1. 必須機能のチェックリスト
在宅勤務の管理において、特に重要な必須機能は以下の通りです。
- 客観記録機能:PCの起動・終了、アプリやWebサイトの利用状況を自動で記録し、稼働実態を客観的に把握できること。
- 勤務時間との乖離把握:従業員の打刻時間とPCの稼働ログを自動で突き合わせ、サービス残業や中抜けの有無を自動判定できること。
- アラート機能:終業予定時刻や規定の残業時間を超えた際に、本人や上長へ警告を通知し、長時間労働を未然に防止できること。
- 残業時間予測:現時点の稼働状況から、月の残業時間を予測し、早期の業務調整を促せること。
- 利用アプリケーションの分類:業務に使用したアプリを集計し、生産性の実態を可視化できること。
3-2. ツール導入で失敗しないための3つの視点
ツールを導入する際は、機能面だけでなく、以下の3つの視点から検討することが、従業員の信頼を失わず、長く活用するための鍵となります。
- 法的要件の準拠性:ツールが労働基準法が求める「客観的な労働時間記録」に対応しているかを確認する。単なる自己申告機能のみのツールでは、在宅勤務の課題を解決できません。
- 従業員のプライバシー配慮:取得情報の透明性を高め、利用目的を明確に伝えること。過度な監視にならないよう、画面キャプチャ機能の制限や、カメラ監視機能の有無等を確認します。
- 他システムとの連携性:現在利用している勤怠管理システムと連携できるかを検討します。
在宅勤務管理は従業員への配慮と・安全配慮義務の対策が重要
在宅勤務における労働時間管理は、単に時間を記録するだけでなく、企業の法的リスク回避と従業員の健康管理、すなわち安全配慮義務を両立させるための基盤です。
成功の鍵は、あいまいな自己申告に頼るのではなく、PCログなどの客観的なデータによる「可視化」にあります。実態の可視化によって、サービス残業や中抜けを防ぐだけでなく、労働生産性のボトルネックを発見し、業務改善や適正な人事評価にもつなげることができます。
まずは就業規則で明確なルールを定め、そのルールを運用するための客観的な記録ツールを導入しましょう。適切な管理体制を構築することで、企業は安心して在宅勤務を推進し、従業員は健康で最大限のパフォーマンスを発揮できるようになります。
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