リスキリングとは?DX推進に求められる理由と導入のポイントを解説

リスキリングとは?DX推進に求められる理由と導入のポイントを解説

デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、企業が持続的な成長を遂げるためには、従業員のスキルアップが不可欠です。この文脈で特に注目されているのが「リスキリング」です。本記事では、リスキリングが企業にもたらす具体的なメリットを深掘りし、DX時代の組織変革を成功させるための秘訣について詳しく解説します。

目次

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    1. リスキリングとは何か?DX時代に求められる理由

    リスキリングのイメージ (44662)

    1-1. リスキリングの定義とリカレント教育との違い

    リスキリング(Reskilling)とは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」を指します。近年では、企業のDX戦略において、新たに必要となる業務や職種に順応できるよう、従業員がスキルや知識を再習得するという意味で使われることが増えています。

    リスキリングと混同されやすい言葉に「リカレント教育」がありますが、両者には明確な違いがあります。リカレント教育は、一度仕事を離れて教育機関などで学び直し、その後再び就職・復職する「就労→学習→就労」のサイクルを繰り返すものです。一方、リスキリングは、企業に在籍しながら、つまり仕事を離れることなく、新しい知識やスキルの習得を目指す点が異なります。また、リカレント教育が個人の自発的な学びであるのに対し、リスキリングは企業側が従業員に対してスキル習得を働きかけるという違いもあります。


    1-2. DX時代にリスキリングが不可欠な理由

    リスキリングがこれほどまでに注目される背景には、大きく分けて以下の要因があります。


    • テクノロジーの急速な進化とDXの推進: AI、IoT、クラウド技術などのデジタル技術が急速に進歩し、ビジネスモデルや産業構造が大きく変化しています。これに伴い、企業は競争力を維持・強化し、新たな価値を創出し続けるためにDXの実現が不可欠となっており、その推進には高度なデジタルスキルを持つ人材が不可欠です。

    • デジタル人材の不足: 情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2022」によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されており、多くの企業が深刻なデジタル人材不足に悩まされています。この人材不足を解消するため、既存の従業員をリスキリングによってデジタル人材へと育成することが急務となっています。

      【出典】経済産業省 商務情報政策局 「IT人材育成の状況等について」


    • 労働人口の減少: 日本では少子高齢化による労働人口の減少が進んでおり、特にIT人材などの専門職において深刻な人材不足が続いています。限られた人材の知識・スキルを高め、自社に貢献できる人材を増やすことがリスキリングに期待されています。

    • VUCA時代の到来と人的資本経営: 現代はVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が高いVUCA時代と呼ばれており、変化の激しい時代において企業は市場の変化に柔軟に対応し、新たなビジネスチャンスを掴む必要があります。また、従業員を「コスト」ではなく「資本」と捉え、その能力や経験を最大限に活かして企業価値向上につなげる「人的資本経営」の考え方が広まっており、リスキリングは人的資本経営を実現する上で重要な人材戦略の一つと位置づけられています。

    2. リスキリングが企業にもたらす具体的なメリット

    企業がリスキリングを導入することは、多岐にわたるメリットをもたらします。


    • 1. 業務効率化と生産性向上
      リスキリングによって従業員が新たなスキル、特にデジタルスキルを習得することで、業務プロセスの改善や自動化、スピードアップが図れます。例えば、IT関連のスキルを身につけることで、業務への積極的なIT活用が進み、DX実現のための第一歩であるデジタル化が推進され、業務効率化と生産性向上につながるでしょう。データ解析や分析の知識を習得することで、顧客情報や注文情報などの社内情報を一元化し、活用しきれていなかった情報を生かして業績向上につなげることも期待できます。

    • 2. 人材不足の解消と採用コストの削減
      専門性の高いデジタル人材は採用競争が激しく、採用コストも高くなりがちです。リスキリングによって既存の従業員に新たな技術を身につけさせれば、社内異動で必要な人材を充足させることができ、採用コストの大幅な削減が期待できます。また、デジタル化によって余剰人材が発生した場合でも、リスキリングによって新たな役割を与えることで、雇用を守りながら人材を有効活用できます。企業文化やビジネスの核心を理解している社内人材を育成することは、外部から採用するよりも、新しいスキルを実務に応用しやすく、社内ノウハウの蓄積にもつながります。

    • 3. 新規事業創出とイノベーションの促進
      リスキリングを通じて従業員のスキルセットが多様化し、チームや組織全体の知識や視点の幅が広がります。これにより、イノベーションを生み出す組織文化が醸成され、社内で新しいアイデアが生まれやすくなります。従業員が新しい価値観や考え方に触れることで、広い視野で物事を考えられるようになり、新たな事業アイデアが生まれる可能性が高まります。激しい競争の中で企業が生き残るためには、時代や顧客のニーズに即した経営戦略が必須であり、リスキリングに成功した従業員が増えれば、積極的な新規事業への挑戦や業務分野の拡大も検討できるようになるでしょう。

    • 4. 従業員エンゲージメントとモチベーションの向上
      リスキリングは、通常業務を行いながら新たなスキルを獲得できる手法です。新たな業務を担当できるようになることで、従業員の仕事に対する満足度が高まり、業務意欲の向上につながります。従業員は自身のキャリアを主体的に形成する意識を高めることができ、積極的に業務改善を図ったり、事業成長につながる提案を行ったりする可能性もあります。企業が従業員の成長を支援することで、従業員は自身の市場価値が高まることを実感し、企業への帰属意識やエンゲージメントも向上すると期待されます。

    • 5. 企業文化の維持・継承
      ビジネス環境の変化に対応するために、新しい人材を大量に採用すると、それまで守ってきた企業文化や独自の「らしさ」が失われてしまう可能性があります。リスキリングが成功すれば、既存の人材を新しい業務に移行できるため、外部から調達する人材が少なく済み、企業文化の継承と企業の成長を両立しやすくなります。既に自社の文化を知っている従業員がリスキリングに取り組むことは、新しいものを取り入れるだけでなく、既存事業とバランスよく融合させる上で有効な方法だと言えるでしょう。

    3. リスキリング導入の5つのステップと課題について

    DX時代の組織変革のイメージ

    3-1.リスキリング導入の5ステップ

    リスキリングを企業に導入し、DX時代の組織変革を成功させるためには、計画的かつ戦略的なアプローチが不可欠です。一般的に、リスキリング導入は以下の5つのステップで進められます。

    1. ステップ1:現状の業務の「可視化」する:自社のビジネスプロセスや従業員のスキルセットを詳細に分析し、デジタル化によって効率化できる業務や、将来的に必要となるスキルを特定します。

    1. ステップ2:教育プログラムの策定:現状の課題や目標から逆算し、必要なスキルを習得するための具体的な教育プログラムを策定します。

    1. ステップ3:学習環境を整備し、新しい働き方を支援する:eラーニングシステムの導入や、学習時間を確保するための業務調整など、従業員が学びやすい環境を整えます。

    1. ステップ4:実務への活用:リスキリングで習得したスキルを実務で活用できる場を提供することが重要です。新事業への挑戦や、学んだことを活かせるポジションを用意するなど、実践機会を設けましょう。

    1. ステップ5:効果検証とフィードバック:習得した知識やスキルが本当に身についているか、定期的に評価や検証を行うことが大切です。

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    3-2. リスキリング導入における課題と解決策

    リスキリングの導入には、いくつかの課題が伴うことも事実です。


    • コスト面の課題
      教育プログラムにかかる費用は、助成金制度の活用や費用対効果(ROI)を意識したプログラム設計で解決。
    • 従業員の意識・モチベーションの課題
      リスキリングの目的やメリットを社員に理解してもらい、長期的なキャリア形成に資するプログラムを提供することで解決。
    • リソース・組織文化の課題
      経営陣がリーダーシップを発揮し、リスキリングの重要性を社内に浸透させることや、越境学習の機会を設けることで解決。

    4. リスキリングの成功事例

    国内外の多くの企業がリスキリングに成功し、具体的な成果を上げています。



    • JFEスチール株式会社: 2017年より全社的なデータサイエンティスト育成プログラムを開始し、2020年度末までに350人の人材を輩出しました。データの利活用による業務改革を推進しています。
      【参考】JFEスチール株式会社 ニュースリリース

    • SOMPOホールディングス: グローバル市場での成長を牽引する人材を育成するため、グループ全体で「SOMPO Global University」を運営し、各社員の自律的なキャリア形成を支援しています。
      【参考】SOMPOホールディングス「人材育成」


    これらの事例は、リスキリングが単なるスキル習得に留まらず、企業の競争力強化、事業変革、そして従業員のキャリア形成に大きく貢献することを示しています。


    5.リスキリングでDXを加速させる

    DX時代のビジネス環境において、リスキリングは企業にとって不可欠な人材戦略であり、組織変革を成功させるための重要な鍵となります。業務効率化、人材不足の解消、イノベーション創出、従業員エンゲージメント向上、そして企業文化の維持・継承といった多岐にわたるメリットは、企業の持続的な成長を後押しします。


    リスキリングの導入にはコストや従業員の意識改革といった課題も伴いますが、明確な目的設定、適切な教育プログラムの策定、実践の場の提供、そして長期的なサポート体制の構築により、これらの課題は克服可能です。

    貴社もリスキリングを戦略的に推進し、変化の激しい時代を勝ち抜く強い組織を構築しませんか。


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