従業員満足度の向上は、企業の業績を良くすることに繋がります。経営者や人事管理者が従業員の満足度を高める施策に取り組むことで、従業員の生産性が高まったり、顧客満足度が向上したりするためです。
実際に従業員満足度を向上させるためには、定期的なアンケートによる調査や、職場環境の改善といった施策が欠かせません。そこで今回は、従業員満足度を向上させるメリットや具体的な取り組み、満足度調査の方法についてまとめました。
目次
1.従業員満足度とは?
従業員満足度とは、職場環境や社内の人間関係、働きがい、福利厚生、給与などの要素で計測される従業員の満足度のことです。従業員満足度は英語で「Employee Satisfaction」と呼ばれ、頭文字を取った略称のESと表現される場合もあります。
働き方改革の施策が本格的に始まった日本において、従業員満足度の向上は経営者や人事管理者が取り組むべき重要な施策の1つです。従業員満足度が高い企業は生産性も高くなる場合が多く、結果的に顧客満足度の向上にも繋がります。
従業員満足度と似た言葉に従業員エンゲージメントという言葉もあります。従業員満足度は企業に対する満足度を表すものに対し、従業員エンゲージメントは自発的に企業への貢献を行う姿勢や意欲のことを表します。まずは従業員満足度を高めることに注力し、その延長として従業員エンゲージメントを高めることが理想的な流れです。
2.従業員満足度の向上により得られる3つのメリット
従業員満足度の向上は、従業員だけに焦点を当てているように思えますが、実際には企業にもメリットがあります。従業員満足度の向上によって得られる主なメリットは以下の3つです。
- 生産性の向上
- 人材の確保や流出阻止
- 顧客満足度の向上
従業員満足度の向上は、企業の生産性やパフォーマンスの向上に繋がります。それぞれのメリットについて、従業員満足度が具体的にどのように影響するかを以下にまとめました。
2-1.生産性が向上する
従業員満足度が高い企業では、従業員のモチベーションが高く、積極的に業務を行います。前向きに仕事を行う従業員は業務の無駄を省き主体的に活動するため、生産性が高い場合が多いです。
また、従業員満足度の高さは従業員同士の人間関係にも良い影響を与えます。従業員同士の人間関係が良好な企業では、コミュニケーションが円滑に行われています。
円滑なコミュニケーションは生産性を上げることに繋がるだけでなく、生産性の高い仕事ができているという実感を感じることが可能です。結果として従業員の成長意欲にもつながり、仕事へのモチベーションも高まります。
2-2.人材の流出阻止に加え確保もできる
従業員満足度の向上は、人材の流出阻止や確保にも役立ちます。多くの企業が人材不足に悩んでいる現在では、優秀な人材の定着は重要な課題です。従業員満足度が高い企業では、従業員が長く働きたいと感じるような環境が整っているため、優秀な人材を確保できます。
従業員満足度が高い企業は、より良い条件を求める求職者にとっても魅力的です。今働いている従業員の満足度を高めることは、新たに優秀な人材を確保することにもつながります。また、従業員満足度の向上は、社外からの求職者だけでなく従業員からの紹介による人材の確保にも有効です。
採用活動や離職に伴う引継ぎ、人材教育には多大なコストがかかります。人材確保にかかるコストを最小限に抑えられることは、従業員満足度を向上させるメリットの1つです。
2-3.顧客満足度が向上する
従業員満足度の向上はサービスや商品の質を向上させることに繋がるため、顧客満足度も高まります。顧客満足度を意味する英語は「Customer Satisfaction」で、頭文字を取ったCSが略称です。
従業員満足度が高い企業の従業員は、自社の商品やサービスをより深く理解するように努めます。また、顧客に対して高い価値を届けられるように、親身に対応を行うことも特徴です。上記のような活動を従業員自らが積極的に行うため、顧客にも良い印象を与えます。
以前は、従業員満足度を犠牲にしてでも顧客満足度を上げようとする企業も存在しました。しかし、従業員の満足度を高めることなく、顧客満足度を向上させることはできません。従業員満足度の向上はすぐに結果に表れない場合もありますが、長期的には顧客満足度の向上に貢献します。
3.従業員満足度を向上させるための具体的な取り組み
従従業員満足度を向上させるためには、従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような具体的な施策が必要です。以下に従業員満足度向上に効果的な取り組みを5つご紹介します。
3-1.労働時間の削減
従業員の満足度を向上させるためには、長時間労働を是正することが不可欠です。長時間労働は従業員の心身の健康を損なうだけでなく、モチベーションや生産性の低下を招く大きな要因となります。
業務効率化ツールの導入や業務プロセスの見直しを行い、無駄な残業を減らすことで、従業員は仕事とプライベートのバランスを取りやすくなり、結果として満足度を高めることができます。
3-2.テレワークやハイブリッドワークの導入・制度強化
現代の従業員は、仕事だけでなく私生活も大切にしたいと考える傾向が強まっています。
テレリモ総研によると、71.6%の従業員がハイブリッドワークを含む、リモートワークを希望しているとのデータがあります。(※1)またパーソル総合研究所のデータでも80.9%の従業員がテレワークの継続意向があるなど(※2)、従業員満足度の向上が狙える取り組みといえるでしょう。
テレワークやハイブリッドワークの導入、フレックスタイム制の採用、有給休暇取得の奨励など、柔軟な働き方を認めることで、従業員は自身のライフスタイルに合わせて働けるようになります。これにより、仕事へのエンゲージメントを高めつつ、生活の満足度を向上させることが可能です。
※1 出典元:株式会社LASSIC
※2 出典元:パーソル総合研究所
3-3.キャリア支援制度の導入
従業員が「この会社で成長できる」と感じることは、満足度を向上させる上で非常に重要です。定期的なキャリア面談を通じて本人の希望や適性を把握し、適材適所の人材配置を行うことが大切です。
また、資格取得支援や研修制度を充実させることで、従業員が自律的にキャリアを形成できるようサポートし、仕事への意欲を高めることができます。
3-4.評価制度を見直し、報酬の不満を解消する
給与や待遇への不満は、従業員満足度を低下させる主要な要因です。客観的な基準に基づいた透明性のある評価制度を導入することで、従業員は自分の評価が公平であると納得できます。
さらに、成果に応じた公平性のあるインセンティブや昇給制度を設けることで、従業員のモチベーションを維持し、報酬への不満を根本から解消することができます。
3-5.従業員の健康と生活を支える福利厚生の充実
法定外福利厚生を充実させることは、従業員の満足度向上だけでなく、他社との差別化にも繋がります。スポーツジムの利用補助や健康診断の費用補助、ランチサポートや社内カフェの設置などは、従業員の健康増進や食生活のサポートにつながる具体的な施策です。
こうした取り組みは、従業員が会社から大切にされていると感じるきっかけとなり、満足度の向上に貢献します。
4.従業員満足度を調査するための3つの項目
従業員満足度の調査はES調査とも呼ばれ、従業員満足度の向上に欠かせません。加えて、従業員満足度の調査では、調査自体が従業員の負担になってしまうことを避ける必要があります。調査する際には調査目的を明確にし、回答させる内容を複雑にし過ぎないことが大切です。従業員満足度の調査は、1回行うだけでは職場環境の改善に役立てられません。同じ調査方法で定期的に調査することで、従業員満足度がどのように変化したかを調べる必要があります。
従業員満足度を測るためのアンケート調査の項目として、以下のような項目が挙げられます。
〇仕事への満足度
仕事の満足度の項目では、仕事の負荷や上司の対応への満足度が主なポイントです。満足度の高さを数値化したり、自由記入の質問項目を用意したりすることで、従業員が感じている仕事への納得感や不満をデータ化できます。
〇メンタルヘルスの状態
メンタルヘルスの調査における主な項目は、組織での人間関係や私生活でのストレスについての質問です。人間関係のストレス要因は、悪化すると労働意欲の低下や離職にも繋がるため、早期の発見とケアが大切と言えます。
〇処遇への満足度
処遇への満足度は、給与面の満足度や人事評価、労働時間、休暇日数の適切さなどが主な調査項目です。給与面や労働時間に対して納得感が高いほど、従業員満足度が高まります。
従業員満足度を定期的に調査し、労働環境や仕事内容の改善に努めることは、現代社会で企業が生き残るために欠かせない取り組みです。従業員が長く働きたいと感じる職場環境を作り、従業員満足度を高めて業績アップに繋げましょう。
まとめ
ここまで、従業員満足度の重要性や企業経営にもたらすメリット、従業員満足度を向上させるための取り組みや調査項目についてご紹介しました。
人材不足や離職率の増加傾向など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。一人一人が自分らしく、そして長期的に働くためには、従業員満足度を高めることが非常に重要です。
経営者や人事管理者の方は、今回の情報を参考に従業員満足度の向上に取り組んでください。

監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。