サービス残業の対策とは?放置リスクと対策事例も解説

サービス残業の対策とは?放置リスクと対策事例も解説

昨今、働き方改革が進む一方で、多くの企業で「サービス残業」が問題視されています。従業員が無給で働くこの行為は、企業の法的なリスクを高めるだけでなく、従業員の健康を害し、企業イメージを著しく損なう深刻な問題です。

「残業は従業員の自主的な意思だから」「業界の慣習だから仕方ない」と放置していませんか?しかし、それは大きな誤解であり、企業にとって計り知れないリスクを伴います。

本記事では、サービス残業を放置するリスクから具体的な対策、そして取り組み事例も紹介し、企業が取るべき正しい対応を解説します

健全な企業経営のために、サービス残業を根絶するためのヒントを見つけていきましょう。


目次

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    サービス残業の定義とは?

    サービス残業とは、企業が従業員に対し、賃金を支払うべき労働時間に対して、賃金を支払わずに労働させる違法行為です。具体的には、以下のようなケースが該当します。  

    • 時間外労働:所定労働時間を超えて働いたにもかかわらず、残業代が支払われない。
    • 休日労働:法定休日に出勤したにもかかわらず、休日手当が支払われない。
    • 深夜労働:深夜(午後10時から午前5時まで)に働いたにもかかわらず、深夜手当が支払われない。
    • 持ち帰り残業:自宅で業務を行ったにもかかわらず、労働時間としてカウントされない。
    • 朝残業:始業時間前に出勤して業務を開始したにもかかわらず、早出残業代が支払われない。

    これらの行為は、労働基準法に違反する違法行為であり、放置すると企業に大きなリスクをもたらします。


    法律上の位置づけ(労働基準法)

    労働基準法第37条は、企業が従業員に法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えて労働させた場合、割増賃金を支払う義務を定めています。割増賃金の支払い義務は、以下の通りです。


    • 時間外労働:通常の賃金の25%以上を割増
    • 休日労働:通常の賃金の35%以上を割増       
    • 深夜労働:通常の賃金の25%以上を割増

    さらに、時間外労働が月60時間を超える場合は、超過分の割増率が50%以上となります。サービス残業は、これらの法律に違反する行為であり、厳しく罰せられます。

    サービス残業を放置する3つのリスク

    業務で疲れている様子

    【リスク1】法的リスクと罰則

    サービス残業を放置することは、労働基準法違反となり、法的な責任を問われるリスクがあります。労働基準監督署の是正勧告や、従業員からの訴訟に発展するケースも少なくありません。

    厚生労働省の「労働基準関係法令違反に係る公表事案」では、サービス残業による労働基準法違反で、企業名が公表された事例も多数存在します。

    悪質なケースでは、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があり、企業の存続にも関わる重大なリスクです。


    【リスク2】従業員の健康リスク

    サービス残業は、従業員に心身に大きな負担をかけます。長時間労働は、過労死や脳・心臓疾患、メンタルヘルス不調を引き起こす原因となります。

    近年では、長時間労働によるうつ病や適応障害などの精神疾患を発症し、労災認定されるケースも増加傾向にあります。従業員の健康を害することは、企業の社会的責任を放棄することに他なりません。


    【リスク3】企業イメージと採用への影響

    サービス残業の存在は、従業員の口コミやSNSを通じて広まり、企業のブラックなイメージを決定づけます。

    「あの会社は残業が多いらしい」「サービス残業が横行している」といった評判が広まれば、採用活動に悪影響を及ぼし、優秀な人材の確保が困難になります。

    また、既存の従業員の離職率が悪化し、さらなる人手不足を引き起こすという負のスパイラルに陥る可能性もあります。


    サービス残業をなくすための具体的な5つの対策

    協力するイメージ

    勤怠改ざんを未然に防ぎ、健全な職場環境を構築するためには、企業と労働者、双方がそれぞれの立場で対策を講じることが不可欠です。曖昧なルールや管理体制は不正の温床となるため、本質的な対策が求められます。


    対策1:ITツールを活用した労働時間管理

    サービス残業を防ぐには、労働時間を客観的に正確に把握することが最も効果的です。ICカードや生体認証による勤怠管理システムを導入し、出退勤時間を正確に記録することで、自己申告による残業時間の隠蔽を防ぐことができます。さらに、PCログ管理ツールを活用すれば、PCの起動・シャットダウン時間やアプリケーションの利用状況など、従業員のPC操作時間を可視化できます。これにより、従業員の業務実態を正確に把握し、サービス残業の温床となる「見えない労働」を排除することが可能となります。

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    対策2:残業できない仕組みやノー残業デーの設定

    物理的に残業ができない環境を整備することも、サービス残業をなくす上で有効な手段です。例えば、定時になるとPCが自動でシャットダウンするように設定するシステムは、強制的に業務を終了させ、だらだらと続く残業を抑制します。また、残業を行う際は事前に上司の厳格な承認を必須とするルールを設けることで、緊急性のない無駄な残業を減らせます。週に一度「ノー残業デー」を設定し、全社的に定時退社を徹底する取り組みも、従業員の意識改革と業務効率化を促す効果が期待できます。


    対策3:業務効率化・生産性向上

    サービス残業の根本原因の一つは、業務量に対して時間が足りないことです。業務の無駄をなくし、生産性を高めることが抜本的な解決策となります。定型的な事務作業はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入して自動化し、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる時間を創出します。また、業務フローを明確化したマニュアルを整備することで、担当者が不在でも業務が滞ることなく進められます。不要な会議や報告書を削減するなど、全社的に業務プロセスを見直すことも、無駄な時間を削減する上で重要です。


    対策4:評価制度の見直し

    長時間労働を評価する企業文化は、サービス残業を助長する大きな要因です。「頑張り」や「時間」ではなく、「成果」で評価する制度に移行することで、従業員は効率的に業務を遂行しようとするモチベーションが生まれます。短時間で高い成果を出した従業員を正当に評価し、不必要な残業を減らすことが健全な働き方を推進します。また、残業が多い従業員に対しては、業務量が多すぎないか、効率が下がっていないかなど、上司が面談を通じて状況をヒアリングする機会を設けることも、サービス残業を防ぐ上で不可欠です。


    対策5:従業員とのコミュニケーション強化

    サービス残業の背景には、上司や会社への不満、業務量に関する相談ができない環境があるケースが少なくありません。上司と部下が定期的に面談する機会を設け、業務量や人間関係の悩みなどを気軽に話せる場を設けることが大切です。また、匿名で相談できる窓口を設置すれば、ハラスメントや業務量に関する悩みを抱えた従業員が、安心して問題を提起できるようになります。こうした取り組みを通じて、従業員が抱える不満や不安を早期に発見し、根本原因を解決することが、サービス残業の発生を未然に防ぎます。


    サービス残業が発生しやすい5つの原因

    サービス残業が発生しやすい5つの原因について解説します。


    原因1:労働時間管理の不徹底

    労働時間管理が従業員の自己申告に依存していると、サービス残業が把握されにくい温床となります。定時を過ぎても業務を続けているにもかかわらず、タイムカードを切らせるような慣行は、不当な労働を常態化させます。PCのログや入退室記録など、客観的なデータに基づく正確な労働時間管理システムを構築し、透明性を確保することが必要です。


    原因2:人手不足・業務量の偏り

    慢性的な人手不足や、特定の従業員に業務が集中する状況は、時間内に業務を終えることを困難にし、結果としてサービス残業を引き起こします。業務が属人化していると、その担当者は責任感から無給で業務を続けることになりがちです。全社的に業務量を可視化し、適切な人員配置を行うとともに、業務を平準化・効率化させる取り組みが不可欠です。


    原因3:企業文化や風土

    「残業は美徳」といった企業文化や、上司が率先して長時間労働を行う風土は、従業員に心理的なプレッシャーを与え、定時退社しにくい空気を作ります。このような環境下では、従業員は周囲に合わせる形で無給の残業を強いられていると感じがちです。経営層が明確なメッセージを発信し、働き方改革を推進する強い姿勢を示すことで、企業文化そのものを変えていく必要があります。


    原因4:みなし管理職の存在

    労働基準法上の「管理監督者」に該当しないにもかかわらず、役職名だけで残業代が支払われない「名ばかり管理職」は、自身がサービス残業の当事者となるだけでなく、部下の労働時間管理もおろそかになりがちです。この問題は、不当な労働環境を組織全体に広げる可能性があります。管理職の役割を再定義し、適切な権限と責任、そして適正な賃金体系を整備することが求められます。


    原因5:テレワーク時の時間管理不足

    テレワークの普及により、出退勤が個々の裁量に委ねられやすくなり、業務時間外のメールやチャットへの対応、深夜の業務連絡などが常態化しやすくなっています。これは、オフィス勤務では発生しなかった新たなサービス残業の温床となります。テレワークにおける労働時間のルールを明確にし、コミュニケーションツールを利用する際のガイドラインを設けるなど、企業として対策を講じることが重要です。


    サービス残業解消のための取り組み事例3選

    笑顔で働いているビジネスウーマン

    事例1:ICカードと残業申請の乖離をなくすシステムの導入

    背景:労働者一人ひとりにまで労働時間を適正に記録することの重要性が徹底されておらず、また社内のチェックも甘かったため、労働時間が適正に管理されていなかったことが確認されました


    対策:ICカードと残業申請の記録の乖離や打刻漏れがあった場合に、上司にエラーメッセージが送信されるようシステムを改修しました。エラーメッセージを受け取った上司は、本人から残業の有無を確認し、正しい記録に修正。さらに、月45時間を超える時間外労働を4回行った労働者の上司には、今後の残業予定に関する計画書を作成させる等の改善を行いました。


    事例2:経営トップによるサービス残業撲滅宣言

    背景:複数の支店において労働時間の自己申告が行われていましたが、正しい時間が申告されているかのチェックが行われていませんでした。朝礼時間や1日30分以内の残業が時間外労働と認められていないなど、労働時間が適正に管理されていなかったことが確認されました。


    対策:経営トップが社内報により全従業員に向けて「賃金不払残業のない職場づくり」への取り組みを宣言。始業・終業時刻は所属長が現認し、勤怠管理表で1分単位で管理する体制を構築しました。また、労働時間管理方法に関する研修会を全従業員向けに開催し、朝礼時間を確保するため窓口の開始時刻を繰り下げる等の改善を図りました。


    事例3:残業時間超過時にPCが使用できなくなる仕組み

    背景:会社は労働者がパソコンで始業・終業時刻を入力する仕組みでしたが、複数の支店で記録と実態に相違がありました。監督署の調査により、終業時刻の入力後に業務日報の作成や業務メールの送信が行われていることが判明し、全社的にサービス残業が行われていたことが確認されました。


    対策:あらかじめ申請された残業時間を超過するとパソコンが使用できなくなる仕組みを導入。ICカードによる出退勤管理を順次導入し、パソコン入力との相違をチェックに活用しました。さらに、本社人事担当者が継続的に支店を訪問し、労働時間が適正に把握されているか、割増賃金が支払われているかを確認する等の全社的な改善を図りました。


    出典:賃金不払残業(サービス残業)の解消のための取組事例集


    健全な企業経営のためにサービス残業の対策は不可欠

    サービス残業は、単なる労働問題ではありません。従業員の健康を害し、企業の法的リスクを高め、採用活動や企業イメージに悪影響をもたらします。これを放置することは、企業の健全な成長を阻む大きな要因となります。

    サービス残業をなくすためには、経営層が強い意志を持って対策を講じることが不可欠です。ITツールを活用した客観的な労働時間管理、残業を抑制する仕組みづくり、そして何よりも従業員との信頼関係を築くためのコミュニケーションが重要です。

     

    本記事でご紹介した対策と成功事例を参考に、ぜひ貴社でもサービス残業の根絶に向けて一歩を踏み出してください。従業員が安心して働ける環境を整えることが、持続可能な企業経営へとつながります。

     

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