SV(スーパーバイザー)の役割
そもそもSV(スーパーバイザー)は、「管理者」や「監督者」という意味です。
日本ではコールセンターや小売店、飲食チェーン店などで現場を管理したり、従業員の指導をしたりする役割の人を、SVと呼んでいます。
ここでは、コールセンターやヘルプデスクにおけるSVについて解説していきます。
1-1. コールセンターにおけるSVとは
1-1. コールセンターにおけるSVとは
コールセンターでは、一般的に1人のSVにつき最大20人のオペレーターでチームを組織します。オペレーターとしての経験があり、SVの資質がある人が昇格してSVの役割に就いていきます。
コールセンターにおけるSVの業務内容は、次の通りです。
▼コールセンターのSV業務例
分類 | 内容 |
---|---|
オペレーターのサポート | オペレーターからの質問対応や 、1on1ミーティングなどによるオペレーターのモチベーション管理 |
エスカレーションの対応 | クレームや複雑な質問など、オペレーターでは対応できないエスカレーション案件への対応 |
モニタリング | オペレーターの電話応対チェックや 、ログの確認 |
シフト管理 | 稼働状況に合わせたシフト調整 |
マニュアル作成や更新 | 新人研修や商品説明、電話・システムの操作マニュアルの作成や更新 |
分析レポート作成 | コールセンターの稼働率に関する分析レポートを作成し 、業務改善につなげる |
どの業務をSVが担当するかはコールセンターによって異なりますが、SVは基本的に多くの業務を兼務しています。
ただ、SVの役職に就く人が初めからすべてのスキルを身につけているケースは少ないので、SV研修を提供することが重要になってくるのです。
1-2. オペレーターとの違い
1-2. オペレーターとの違い
コールセンターにおけるSVとオペレーターの大きな違いは、マネジメント業務に携わるかどうか、という点です。
クレーム対応などでSVも電話に出るケースがありますが、顧客対応は原則としてオペレーターの役割だといえるでしょう。
SVは顧客対応ではなく、取り扱う商品を提供するクライアントとのやり取りや別部署へのヒアリング、それに基づく業務設計、オペレーター管理などを行います。
また、SVとオペレーターでは必要となるスキルも異なります。オペレーターには、顧客満足度を高めるための言葉遣いやビジネスマナー、商品知識などが必要です。
一方でSVは、チームを円滑にまとめたり、オペレーターを育成したりするスキルが求められます。SVはオペレーターから昇格するケースが多く、オペレーターのスキルだけではSVとして役割を果たせないので、必要なスキルを研修で身につけるのです。
具体的にどのようなスキルが必要なのかは、次項で解説していきましょう。
1-3. SVに必要とされるスキル
1-3. SVに必要とされるスキル
コールセンターのSVには、次のような幅広いスキルが求められます。
▼SVに求められるスキルの一例
スキル | 内容 |
---|---|
コミュニケーション能力 | クライアントや顧客、他部署、オペレーターとの調整力および交渉力 |
問題解決能力 | トラブル時の対応力、再発防止対策の設計 |
指導力 | オペレーターの育成や評価能力、コーチングスキル |
KPI管理 | コールセンターに必要な目標設定と管理能力 |
業務改善能力 | KPIに基づき弱みを分析し、応対品質などの改善につなげる能力 |
このように、SVには多くのスキルが必要とされます。すべてのスキルを身につけて磨くためには、継続した研修が重要になってくるのです。
コールセンターでSVが育たない原因
コールセンターでは「SVが育たず不足している」「SVがすぐ辞めてしまう」と悩んでいる責任者が多くいらっしゃいます。
ここでは、SVが育ちにくい原因について3点を挙げて解説します。
原因(1)オペレーターとは異なった知識やスキルが求められ自信を失う
原因(1)オペレーターとは異なった知識やスキルが求められ自信を失う
オペレーターとして経験を積んでからSVとして昇格した場合に、しばらくして自信を失ってしまうケースが見られます。その理由は、SVとオペレーターでは求められる知識やスキルが異なるからです。
たとえば、SVには複数のオペレーターの応対品質をチェックして指導したり、業務フォローをすることで、「成果を出せるチーム」になるようマネジメントしていく役割が求められます。
そのため、「オペレーターとして十分な経験や豊富な商品知識があり、顧客対応もできる」状態であったとしても、SVとしては上手くいかないこともあります。結果として、オペレーターとして優秀であっても、SVとしては力不足で自信を失い、離職につながってしまうケースもあるのです。
原因(2)SVになりたくないと思っているオペレーターが多い
原因(2)SVになりたくないと思っているオペレーターが多い
コールセンターでは、オペレーターからSVになるケースが多く見られますが、「SVに昇格したくない」と考えるオペレーターも少なくありません。
その理由の1つに、「SVは業務量が多く責任が大きいのに、収入があまり上がらない」という現状もあります。
前述したように、SVの業務量は多岐に渡ります。主な業務は、エスカレーション対応やオペレーターのモニタリング、KPI管理、レポートの作成、採用、シフト作成、業務改善などです。
どれもコールセンターを円滑に運営するために重要な業務であるため、SVになるとプレッシャーや責任が大きくなってしまいます。
特に、クレームや難易度の高いエスカレーション対応、KPIの確認や改善策の立案は、大きなプレッシャーになりがちです。苦労して働くSVを近くで見る機会の多いオペレーターが「SVになりたくない」と感じるのは、自然なことなのかもしれません。
さらに、オペレーターにとってSVは特殊な専門職のように見えてしまい、キャリアが描きにくいというのも「SVになりたくない」と思う原因の一つです。オペレーター業務が合っているならば、「よく理解できないSVには昇格したくない」という考えに至ってしまうケースもあるでしょう。
原因(3)SVになった後、何をすればいいかわからない
原因(3)SVになった後、何をすればいいかわからない
年功序列でオペレーターがSVとして任命された場合、「何をすればいいか分からない」と困ってしまい、離職に至るケースも散見されます。そのようなコールセンターは、SVを育成する体制が整備されておらず、SV不足に陥りがちです。
年功序列では「他に誰もいないので仕方なくSVに昇格した」というケースもあるため、もともとモチベーションが低かったり、SVとしての資質が足りなかったりします。
コールセンターへ効果的にSVを配属させるには、SVとしての資質のある人材を見つけ、必要なスキルを身につけられるよう研修を提供することが重要なのです。
コールセンターのSV研修が必要な理由
コールセンターは多くのオペレーターが所属する組織です。SVはオペレーターが活躍できるよう、組織・業務マネジメントを効果的に実施する重要な役割を担っています。
つまりSVは、コールセンターが組織として成長するために欠かせない人材なのです。SVの成長が組織の成長と直結しているといっても過言ではありません。
そのSVの成長を促すためにも、スキルが身につく研修を提供していくことは重要なのです。そして研修では、組織のマネジメントスキルやSVとして取るべき行動、顧客満足度を高めるためのスキルを学ぶことが求められます。
そこで次項では、コールセンターのSV研修の種類について具体的に解説していきます。
コールセンターのSV研修の種類
コールセンターのSV研修の種類
コールセンターのSV研修には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、4つを挙げて解説していきます。
SV研修(1)SVの業務を理解するもの
SV研修(1)SVの業務を理解するもの
まずご紹介するのは、SVの業務や役割を理解するための研修です。これは、SVになったばかりの人や、SV研修をこれまで受講したことのない人が対象となります。
研修では、会社の上司やオペレーターの立場に立って「SVに何をしてもらいたいか」を考えたり、「自分が上司やオペレーターだったらSVに何をしてほしいか」を考えたりします。
さらに、SVの管理業務やオペレーターの指導について概要を知ることも重要です。特に、「応対品質」はコールセンターにおいて重要なKPIですので、「応対品質を向上させて顧客満足度を高めるには何をすればいいか」を研修で学んでいきます。
「高い応対品質とはなにか」という前提の理解がなければ自分の感覚だけで判断してしまうようになりますので、正しい知識を研修で身につける必要があるのです。
SV研修(2)PDCAの回し方を学ぶもの
SV研修(2)PDCAの回し方を学ぶもの
PDCAの回し方もSVとして身につける必要があります。
まずは目標を立て、どのように実行して評価し、改善するのかという一連の流れを理解します。あわせて、コールセンターにおける重要なKPIについて学び、管理する方法を習得していきます。
さらに、組織としての目標設定や改善だけでなく、オペレーター個人に対してどのような目標を与えて評価するか、という指標を明確にする方法も理解しなければなりません。オペレーターをモニタリングした結果に対しフィードバックして改善につなげるのも、SVの重要な仕事です。
組織全体だけでなく、オペレーターのPDCAの回し方や、その指導方法も、研修を通して身につけましょう。
SV研修(3)リスクマネジメントを学ぶもの
SV研修(3)リスクマネジメントを学ぶもの
コールセンターの管理者であるSVとして、リスクマネジメントも研修で学びます。業務上で生じるかもしれないリスクを理解し事前に対応策を検討しておくことは、非常に重要です。
たとえば、時間やコストにまつわるリスクマネジメントがあります。「なにを、いつまでに完了しないと、どのようなリスクが起こるか」「人材の採用や育成コストが、どれくらい予算をひっ迫するか」などが挙げられるでしょう。
「やってはいけないこと」をあらかじめ理解しておくことで、リスクを回避することができ、コールセンターを円滑に運営できるようになります。
SV研修(4)チームマネジメントを学ぶもの
SV研修(4)チームマネジメントを学ぶもの
SVにとってチームマネジメントも重要な業務の一つです。人材育成、モチベーション管理、コーチング術などを研修で学ぶこともできます。
チームマネジメント研修を受講することで、チームを強化するスキルが身につくでしょう。たとえば、「コーチング」を学んで傾聴や効果的なフィードバックの仕方を習得すると、オペレーターと信頼関係を結びやすくなるはずです。
また、研修では「ワークフォースマネジメント(WFM)」についても学べるものがあります。WFMとは、人材配置を最適化しながら人件費を抑える方法です。
WFMを学ぶと人的リソースを有効活用できるシフト管理が理解でき、最適なチームマネジメントが実現しやすくなります。
コールセンターのSV研修を成功させるポイント
SV研修の種類を見てきましたが、コールセンターのSV不足を解消して人材を育成するには、単に研修を提供するだけでは不十分といえます。
ここでは、SV研修を成功させるためのポイントについて、4つを挙げて解説します。
ポイント(1)SVの責任範囲や業務を文書化する
ポイント(1)SVの責任範囲や業務を文書化する
会社としてSVの責任範囲や業務を文書化しましょう。SVの業務を定義し、明確にしなければ、SVは目の前の雑務に追われてストレスが溜まり、離職につながる恐れがあります。
SVの業務範囲や、労働時間、権限を明確にして残業時間を削り、SVにとって働きやすい職場づくりをすることが重要なのです。
ポイント(2)SVの資質のある人材を選定する
ポイント(2)SVの資質のある人材を選定する
SVとなる人材を選定する際、“SVの資質のある人”を選ぶことが非常に重要です。SVとしての資質を有していなければ、業務がスムーズに進みにくくなる恐れがあります。
SVとして備えていてほしい資質としては、次のような項目が挙げられます。
・リーダーシップ
・ロジカル思考
・判断能力
・ホスピタリティ
・タイムマネジメント
・柔軟性
・会社へのロイヤリティ
・自主性
・粘り強さなど
SVにふさわしい人材を見つける方法として、今いるオペレーターから見つける方法と、外部から採用する方法があります。
どちらにせよ、これまでの経験やスキルに加えて、ここで挙げた資質を備えているかを見抜くことがポイントです。
ポイント(3)SVを育成する環境を整備する
ポイント(3)SVを育成する環境を整備する
SV研修を1日だけ提供したとしても、SVの育成は難しいものです。ですから、企業としてSVを育成する環境を整備することも重要といえます。SVを継続して育成するような環境を整えることで、SVの人材不足を解消することができ、組織の成長にもつながっていくでしょう。
具体的には、SVのキャリアプラン、相応の給与、上司に相談しやすい仕組み、継続的な研修の機会提供などがあります。また、SVになったばかりの人を対象にした教育体制の整備も必要です。OJTで丁寧に引き継いで育成することで、理想のSVとしての成長が期待できるでしょう。
ポイント(4)SV研修を専門会社に外部委託する
ポイント(4)SV研修を専門会社に外部委託する
社内にSVを育成するノウハウがなければ、SV研修を専門会社に外部委託すると良いでしょう。豊富な経験を持つ専門会社から学ぶことで、SVを効果的に育成できます。
社内だけで育成すると客観的な評価や指導が難しく、理想のSVが育たない恐れがあります。また、「SV育成にじっくり取り組んだことがない」というケースでも、やはり外部へ委託するのが有効といえます。
そこで次項では、どのようにSV研修を選べば良いのかを解説します。
成功するSV研修の選び方
成功するSV研修の選び方
それでは、SV研修の選び方について3点ほど挙げて解説しましょう。
選び方(1)研修形式は自社に合っているか
まずは、研修形式が自社のニーズに合っているか確認しましょう。
SV研修には、講師を迎えて実施する「講義形式」だけでなく、「公開講座」や「オンライン研修」などがあります。
「講義形式」は自社の課題にあわせてカスタマイズできる点がメリットといえます。「公開講座」は他の形式と比べて価格が低い傾向にあります。一方、「オンライン研修」ではどこからでもアクセスできる点がメリットでしょう。
どの形式が自社に必要なのか、まずは社内の課題を洗い出してから研修を選択していくようにしましょう。
選び方(2)クオリティの高い研修を受けられるか
クオリティの高い研修を受けられるかどうかも、重要なポイントです。
たとえば、講義形式だけでなく「グループワーク」や「エクササイズ」「ケーススタディ」など、実践を伴うような研修であれば、理解も深まります。
また、“業界のスタンダード”を意識して設計されている研修かどうかも確認すると良いでしょう。
選び方(3)SV研修の実績はあるか
研修を導入する前に、これまでどのような実績があるかを確認することも必要です。自社と同じ業界や類似した規模へ研修を実施したことがあるか、どれくらい成果が出たか、などを確認しましょう。
実績が豊富な企業であれば、自社の課題を把握してもらいやすく、効果の高い研修を実施してくれるはずです。
SV研修ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
SV研修ならパーソルビジネスプロセスデザインへ
SV研修は、コールセンターの応対品質を高め、顧客満足度を向上させるために欠かせません。研修により、SVに必要な幅広いスキルを身につけることはコールセンター全体の成長にもつながるでしょう。
私たちパーソルビジネスプロセスデザインでは、「スタッフ/リーダー教育サービス」として、SV向け研修を提供しています。
世界最大のサポートセンターメンバーシップ団体『HDI』公認の講師が多く在籍しているため、質の高い研修を受けられる点が特徴です。
SV研修は、単発ではなく継続してトレーニングを提供することが重要です。多くの実績がある専門会社の知見を取り入れることで、SVとしての視野は広がっていくはずです。
「SV研修を実施したい」という場合には、ぜひお気軽にパーソルビジネスプロセスデザインにご相談ください。